カタックは、ヒンズー教とイスラームの要素を兼ね備えた、
数あるインドの古典舞踊の中でもユニークな踊りです。
ヒンズー教の牧歌的でおおらかな伝統を残す一方、ムガール帝国がもたらした、
イスラム文化の華やかで音楽性の強い洗練された一面を持ちます。
神話を伝えるだけでなく、人間の普遍で多彩な心情を描き出すカタックは、
各地で支持層を増やし続けています。
Kathak dance is North Indian classical dance. The word kathak means “to tell a story”. It’s derived from the dance dramas of ancient India. The harmonious combination of Hindu culture & philosophy, and graceful movements & intricate rhythmical play which derived from Islamic world make this dance form unique among numerous classical dance forms in South Asia. Kathak is known for its fast rhythmic footwork, fast pirouettes and delicate mime.
寺院時代
カタックは、一般的にはヒンズー教の寺院の語り部にその起源があると伝えられています。信者の前で神話や神の教えを語っていた男性の story teller(語り部)が、 カタックの始まりです。当時は、踊りの要素はほとんどありませんでした。時を経て、「語る」という行為を補助するために、アビナヤと呼ばれる、 パントマイム的な要素が取り入れられていきました。その語り部たちの語りに加え、フォークダンス、ベンガルとベンガルにいたNachnis、ベンガルのVaishnava一派、ペルシャの文化などが混ざり、カタックをより豊かな踊りへと成長させたのです。カタックのパフォーマンスはソロが基本です。1人の踊り手が舞台を七変化させていきます。カタック(kathak)という言葉のkathaとは、「話」を意味します。今日でも、カタック ダンスの席では、 踊り手は必ず何かしらの形で話すことを要求されます。なぜならば、kathaとは、語ることの芸術であると、 インドではみなされているからです。「言霊」という言葉があるように、インド社会では、今日でも、言葉を重視するという伝統が残されています。
クリシュナ神と、人間であるラーダの永遠の愛は、神と人間のつながりを多角的に表現しています
幼少期のクリシュナ いつものようにお母さんの目を盗んでいたずらを。。。
ラーマヤーナより シータ ハラン
(舞 Srabani Banerjee 東京公演)
王子ラーマが、怪物ラバナに連れ去られた妻シータを救いにいく有名なお話。人物の外見的な特徴をポーズで表現。弓を放つ直前のラーマ。
宮廷時代
8世紀に、続々と西アジアの民族がインドに進入してきます。ラクナウを中心に、北インドはイスラームの支配化に入ります。 この時代に、ペルシアから、多くの踊り子がムスリムの宮廷に送られ、その高度な技術がカタックの中に取り入れられていきます。 イスラームの王様(Nawabs)と、ヒンズーの王様(Maharaja)をパトロンに持った踊り子たちは、競って純粋舞踊に磨きをかけました。 舞台は寺院から宮廷に移り、一部の教養ある人々の前で、複雑なリズム(16拍子、7拍子、9.5拍子などなどたくさんのリズムがあります)サイクルの中で、 200個を超える鈴(グングル)を足に巻いてフットワークを披露し、チャッカルと呼ばれる華麗な旋回を繰り広げました。 ミュージシャンによる演奏との掛け合いや、顧客のその場でのリクエストに応えるなど、即興性が求められました。また、ムガールの宮廷のお抱え音楽家による、Dhurupadなどの高度な古典音楽にあわせた踊りも反映していきます。踊り子たちは、踊るだけでなく、古典音楽を理解し、歌うことも要求されました。ムスリム文化の影響を受け、 カタックが技術的に大きく成長したのがこの宮廷時代です。
植民地時代
17世紀に入り、イギリスによるインドの植民地が進むと、イスラームの宮廷の力が次第に弱まりをみせます。パトロンをなくした踊り子たちは、商業的な踊りや歌で生計を立てて行くことを余儀なくされます。多くのダンサーが、イギリスの植民地支配の拠点となったベンガルのカルカッタ(現在のコルカタ)に移り住み、お金持ちのイギリス人や、そのイギリス人の富の恩恵を受けたインド人の前で踊ることとなりました。また、キャラバンを組み、各地を点々とまわり、芸で生きて行った踊り子やミュージシャンもいました。踊りの技術的な成長は低速期に入りましたが、この時代を反映するかのように、 Thumariなどの恋愛や人生感を歌ったアイテムが成長をみせます。準古典音楽のGhazalも、今世紀に入ってからカタックに取り入れられました。現在でも、インドでは、ほとんどの舞台で、身体表現の純粋舞踊と共に、Thumri、Bhajan、Ghazalが踊られ、人々の心をとらえ続けています。最近ではほとんど見られませんが、長年研究を続けている熟練ダンサーの中には、ひとつの曲で、何十分も踊り歌い続けることのできる方もいらっしゃいます。1つ1つのフレーズを色々な角度からとらえ、自分の考えや理解を様々なジェスチャーで表現していきます。まさに、カタックの特徴である、踊り手の哲学が表現されるアイテムです。歌詞とは全く違うストーリーを展開することもありますが、その中には、必ず元の歌詞につながる比喩表現が入っています。それを理解するためには、鑑賞する観客側にも教養が求められます。
現代のカタック
カタックは、古典舞踊としての多くの法則やルールを持つと同時に、柔軟性のある踊りです。現在では、世界のあらゆるジャンルの舞踊家に取り入れられ進化を続けています。また、モダンな題材や動きの試みがなされる中、古典的な題材やそのルーツをたどる動きも出ています。インドの映画業界、Bollywoodボリウッドでも華やかなカタックをベースとした動きは大人気です。ラクナウ流派を代表するPt.Birju Maharajと愛弟子Saswati Sen
ジャイプールのスタイルを組み合わせ、独自のカタックを広めたRohini Bhate
モダンな動きと群舞で魅了するKadambのKumdini Lakhia
スーフィーカタックを創設した、美と知性を兼ね備えた若手ダンサー Manjali Chaturvedi